
ここまで来た社長は、正直すごいです。
事業の構造を見直し、方向性を決め、収益を設計し、業務を組み替え、数字で検証までした。
――なのに。
「なぜか、ここから進まない」
「決めたはずなのに、元に戻っている」
STEP6は、そんな“最後の壁”を扱います。
テーマはシンプル。
事業構造転換は、決めた瞬間ではなく、
“続けられた瞬間”に初めて完了する。
この回では、
・転換が止まる典型的な瞬間
・そのとき何が起きているのか
・どこに、どう介入すべきか
を、現場目線で整理していきます。
「正しい構造」なのに、なぜ元に戻るのか
まず大前提として、はっきり言います。
転換が止まるのは、意志が弱いからではありません。
多くの場合、原因は次のどれかです。
- 現場の“日常”が強すぎる
- 社長が無意識に元の役割に戻っている
- 判断基準が、言語化されていない
- 数字を見るタイミングがズレている
つまり、構造の問題です。
STEP6は、
「社長を頑張らせるフェーズ」ではなく、
“止まりやすい構造に、先回りで手を打つフェーズ”なのです。
転換が止まる瞬間① 忙しくなったとき
最初の停止ポイントは、とても分かりやすい。
忙しくなったとき。
- 人が足りない
- クレームが出た
- 納期が詰まった
この瞬間、何が起きるか。
社長が、現場に戻ります。
しかも、無意識に。
「今だけだから」
「俺がやった方が早い」
「説明する時間がもったいない」
――この一歩が、転換を止めます。
ケース:社長が戻った瞬間、組織は止まる
ある製造業の社長は、
「現場は任せる」と決めていました。
ところが繁忙期に入り、
現場が少しバタついた瞬間、社長が介入。
- 判断を社長が持つ
- 指示待ちが発生
- 現場の判断力が低下
結果、
社長がいないと回らない状態に逆戻りしました。
問題は、介入したことではありません。
介入の“ルール”が決まっていなかったことです。
介入ポイント①「戻っていい仕事」と「戻ってはいけない仕事」
STEP6で最初に決めるべきは、これです。
社長が“戻っていい仕事”と、“戻ってはいけない仕事”。
全部戻らない、は現実的ではありません。
だからこそ、線を引きます。
例えば、
- 売上・利益に直結する判断 → 戻ってOK
- 顧客対応の最終判断 → 条件付きでOK
- 日常オペレーション → 原則NG
この線が引けていないと、
忙しさ=全部社長に戻る
という構造になります。
転換が止まる瞬間② 「決めた基準」が使われなくなるとき
STEP1〜4で、
たくさんの「決めごと」をしてきたはずです。
- この条件ならやる
- この条件ならやらない
- ここは譲らない
ところが、実行フェーズに入ると、こうなります。
「今回は特別」
「昔からのお客さんだから」
「目先の売上が欲しい」
基準が、感情に負ける瞬間です。
ケース:一度の例外が、構造を壊す
あるITサービス業では、
- 価格を下げない
- 要件が曖昧な案件は受けない
と決めていました。
しかし、
「紹介だから」
「今月の数字が足りない」
この一件の例外が、
- 値下げ交渉の常態化
- 無理な案件の増加
- 社長の調整業務増大
を招きました。
構造転換は、
一度の“まあいいか”で簡単に壊れます。
介入ポイント② 判断基準を「思い出す仕組み」にする
ここで重要なのは、
社長の意志を強くすることではありません。
判断基準を、思い出させる仕組みを作ること。
具体的には、
- 判断基準を1枚にまとめる
- 迷ったときのチェックリストを作る
- 月1回、基準を見返す時間を取る
人は、忙しくなると忘れます。
だから、忘れる前提で設計するのがSTEP6です。
転換が止まる瞬間③ 数字を見るのが遅れるとき
もう一つ、非常に多い停止ポイントがあります。
数字を見るタイミングが遅い。
- 月末にまとめて確認
- 問題が起きてから振り返り
これでは、
転換がズレていても気づけません。
ケース:3か月後に「間違っていた」と気づく会社
ある会社では、
新しい構造で3か月走りました。
結果は、
- 売上:想定通り
- 利益:想定以下
- 現場負荷:想定以上
「なんかおかしい」と感じたのは、3か月後。
本当は、
2週間目には兆候が出ていたのです。
介入ポイント③「確認する数字」を最小限に絞る
STEP6で見る数字は、多くありません。
むしろ、絞ります。
- 粗利
- 社長の稼働時間
- 現場の詰まりポイント
この3点を、
短いスパンで見る。
週1でもいい。
「ズレていないか」を確認するだけで、
致命傷は避けられます。
実行伴走の本質は「修正前提」であること
ここで、はっきり言っておきたいことがあります。
一発でうまくいく構造転換は、ほぼ存在しません。
- 想定と違う
- 現場が耐えられない
- 思ったより利益が出ない
これは、失敗ではありません。
想定が現実に当たった、というだけ。
STEP6は、
「正解を押し付ける」フェーズではなく、
現実に合わせて、構造を削り、整えるフェーズです。
社長が一人で抱えないために必要な視点
最後に、STEP6で一番大切な視点を。
それは、
「社長が一人で背負わない」構造になっているか。
- 判断を共有できているか
- 数字を一緒に見られているか
- 相談できる相手がいるか
事業構造転換は、
社長の孤独を減らすための取り組みでもあります。
6ステップを終えて
STEP1〜6を通してやってきたことは、
派手な改革ではありません。
- 決める
- 絞る
- 設計する
- 手放す
- 検証する
- 直し続ける
この積み重ねです。
でも、これができた会社は、
「頑張らなくても前に進む構造」を手に入れます。
今日の一言
転換が止まるのは失敗ではない。
止まりかけた瞬間に、
どう介入できるかが、社長の仕事だ。
